堕天使たちの中で最初に地上に降り立ったのはセムヤザだった。
ウォッチャーたちは同時期に堕天したが、数年から数十年の間隔をあけて地上に降り立った。天界と地上界では時間の流れが異なるからだ。天界での数秒が、地上界での数カ月に相当する。つまり、天界と地上界を隔へだてる緩かん衝しよう帯たいに入ったタイミングが数分遅れただけで数年の差がついてしまうんだ。
※
そして緩衝帯の中の移動中は時間と時空が前後する。
例えばほら、時空の隙間に見えるあの景色、
光がほとばしっているあれだ。
あの光は遥か昔マスターエンジェルたちによって生み出された、
光の子・天使。
あの後、ヒトの時間でほんの100万分の1秒も経たないうちに
聖戦へと誘われるはずだった。
ほらまた、別の時空の隙間が見えたようだな。
あれはアーチ・ベイル・ガーレの3種の武器を装備した
唯一にして最初の天使。
おっとまた次の隙間が見えてきたな。
あの巨大なモニュメントはさっきの天使が発見した
今から1兆5000億年以上前の古代隕石だ。
ギデ化したまま膠着した巨大な天使の亡骸。
そこに埋め込まれた巨大な三つの武器があるだろ。
あれは、現在のアーチ、ベイル、ガーレの始祖鉱石となるものだ。
そういえば、あの天使の名前なんだったかな…
まあいい、とにかく彼があの隕石から鋳造することで
今の神器が出来たのさ。
懐かしい話だな、詳細は又暇があれば話すとしよう…。
まあ無限の時間がある私にとっては
明日の出来事かもしれないがな。
さて、本題に戻ろうか。
そんな緩衝帯を抜けたその先で最初に地上に降り立ったのが、
このセムヤザだった。
※
彼は力のある天使だったので、地上界での姿を自分で決めることができた。なぜ少年の姿をとったかというと、
そこには彼が堕天を決意した理由が関係している。
それは、ひとりの少女と出会うためだった。
エルシャダイ原作小説時の旅人より
(※今回追加文、今後発売を予定しているエルシャダイセタ記“時の旅人”用の文面になります)
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