家計を支えるために農業の傍ら羊飼いをしているイーノックは、
これといって優れた才能があるわけでもなく
すぐ他人にだまされる、人の良さだけが取り柄の、寡黙で信心深い男だった。
ある夜、彼は夢の中で声を聞く。
「イーノック、おまえには使命がある。神を裏切った堕天使に罪を償わせろ」
目を覚ましたイーノックは、一日中、夢の中の声について考えていた。
そして一日が終わり、仕事を終えて帰宅しようとした彼の前に黒い服を着た青年――ルシフェルが現れた……。